繊維館を表現する上で面白い文章がある。.
 
ハプニング建築
けったいな建物

銀色のスロープの屋根に 真っ赤なドームが突き出ている。

ドームの周りには曲がって錆びついた鉄の足場がまとわり付き
金づちや鋸を動かすヘルメット姿の作業員の彫像が三体
 これも真っ赤だ。

紡績協会 化繊協会など国内八団体 238社が
共同出展する繊維館は
完成後もこんな工事中の姿が残される。

完成された美を追求する建築の常識からは
ほど遠いけったいなパビリオンになったようだ。

設計したのは イラストレーター横尾忠則氏 32歳 
クロ背広にピンクのシャツ 原色のストライプのネクタイに 
ひげ面 4月半ば打ち合わせのため 
大阪に現れるときのスタイルである。

ヒッピーのOBというところだ。

建築現場で 私がハイ ここでやめてくださいといった時点で
建築のプロセスを凍結させる
今度作るのは建築といえば小さいし
彫刻でもない既成の芸術概念と違うから名前がないんです。

名前があるのは 過去のもの ということですよ。

しかし名前がないのは困る。

繊維館の関係者たちは 
仕方がないから凍結足場と呼ぶことにした。

繊維館は横尾氏ら昭和生まれの前衛芸術家8人が
スタッフとして演出をする。

ドームの中では映像 彫刻 照明 音を
複雑に組み合わせた複合メディアを表現する。

スポンサー 出展者の日本繊維館協力会から
シナリオかコンテを見せてくれと言われたとき
総合ディレクターの松本敏夫氏は 
そんなものはないといって相手を驚かした。

 イメージを固めた設計図から作っていくのではない 
イメージを膨らませて行動を起こしていく 
波紋が広がりイメージがまた広がる。

連続した意識の緊張なかで
思想を選び出し作り上げている。

8人をぶつける時 それぞれの分野の寄せ集めでない。

掛け算の新しい体験が生まれる。

ハプニング哲学みたいだ。

協力会としてはカッチリしたものを作りたい 
がスタッフには スタッフの意欲がある。

ドラッカー流に言えば まさに断絶が両者の間にあった。

このため大阪船場の日本綿業クラブで 対話が再開された。

第一のテーマはもちろん凍結足場。

 ロビーの中にも足場を残すなら 
子供がよじのぼって危険でないか

横尾氏 ほんの少しはみ出す程度で
人が届かない範囲だからよじのぼれない。

 建築の過程から出てくる必然のものでない。

造形美とくっつけるから予算オーバーになる。
     (笑い)
秋山邦晴氏 音響担当 
はじめ足場を残しておくという話だったがと切り返す。

もっと煮詰めて予算がいくらかかるか話しあおう。

今井直次氏 照明担当照明にも

関係してくるから早く決めてほしい。

会議は延々五時間に渡った。

熱っぽい空気だった。

スポンサー側のまとめ役 
協力隊事務局長の大貫朝冶氏は68歳。

明治生まれには さっぱりわからないという。

昭和6年に紡績業で 初の南米駐在員となり 
ロンドン駐在員当時の12年にはパリ万博顧博も見た。

戦後1955年にミスユニバース児島明子氏ら
六人のモデルを連れて豪州での
初のファッションショーをした。

日東紡常務をやめた時
新しがり屋だからと事務局長にスカウトされた。

それでも八人の若い侍には ついていけそうもない。

横尾氏をスタッフに決めてから
映画 新宿泥棒日記の主役に横尾氏が なった。

高倉建とLPも吹き込んだ。

繊維館の映画で主演女優を募集した時も
横尾氏に逢えるならと応募者が押掛けた。

エレベーターに 横尾氏が乗るとき 娘たちが待ち構えている。

つまりは 売り出し中である。

それは ともかく日本の産業界では老舗である繊維業界の
パビリオンで常識を破った新しいハプニングが見られそうである。

日本万国博にはさまざまな建築が登場する。

そのなかで横尾氏たちが目指しているのは
半世紀ではなく未来への可能性であり
今の建築界に対する挑戦とも言えるだろう。
これが万国だ
 より再構成
いたしました。

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